私を伸ばしたビジネス英会話

海外経験豊富なビジネスマンが語る、とっておきの英語フレーズをご紹介。どういう場面で使うのか、どういう効果があるのか、など、交渉を進める上できっと参考になるはずです。商談相手に「できる!」と思われること請け合いです。

UK
M・Tさん(40代 食品)
日本の食品メーカーの営業職として、おもにアジア圏への長期出張を繰り返してきたが、今年1月より欧州の市場開拓の下調査のため、ロンドンに滞在中。1年でマーケット調査をまとめ、その結果次第でロンドンへの長期赴任の可能性も。ビジネス英会話には自信がない。

Vol.2 I have an opportunity that might be suitable for you.

私が食品メーカーに入社したのは、日本食の素晴らしさを世界中に広めたいという気持ちがあったからです。入社数年後に新婚旅行でパリに行き、フランスの食事にもやや飽きたときに、日本食レストランがあると聞いて行ってみたところ、そこではラーメンやカレーライス、定食などがあり、シェフは日本人。数日ぶりの日本食に妙に嬉しくなったものですが、お客さんは日本人ばかり……。「なぜフランス人は来ないのか?」と、素朴な疑問が起きたのです。実はパリにはすでにフランス人に定評のある日本食レストランはあったのですが、それらは値段も高く一部の食通が通うところであり、普通のフランス人が通うようなところではなかったようでした。もしかしたらこのお店も、フランス人には高額というイメージが定着していているのかもと思いました。このとき、いつか舌の肥えた多くのフランス人に日本食を認めさせたい、いや、フランスのみならずヨーロッパにヘルシーな和食文化を紹介し定着させたい、という野心が芽生えたものです。

その後、国内営業を経て海外開発部門に配属。最初はタイ、ベトナム、インドネシアといったアジア圏の営業担当になりました。1カ月単位の長期出張を繰り返していましたが、現地のかたの多くは日本語が話せるので、言葉に苦労することなく仕事に集中できていました。

ヨーロッパで日本ブームと言われるようになったここ2~3年、当社でも市場開拓に力を入れ始め、今年から念願の欧州市場開発部に配属。ロンドンをベースに1年間、ヨーロッパ各地のマーケットリサーチを任されています。ベースがロンドンということと、ヨーロッパでは異なる言語の国が多いなか英語がビジネスでは絶対不可欠でもあることから、赴任前は社内の英会話レッスンに毎週通い、日常会話とビジネス英会話を学びました。奇跡的にTOEIC®は750点をクリアすることができたものの、英会話が上達したとは言い難く、言葉に不安を抱えたままのロンドン赴任となったのです。

そんな私でも、現地採用の社員の力を借りながら、片言ながらも積極的に英語を話すように努めました。自信をもった話し方をしないと営業はできないと思ったからです。そして赴任2カ月後、イギリスの食品会社や大手スーパーマーケットなどとアポイントを取り付け、当社の食品を紹介する機会を持ち始めたのです。説明では「自信をもってストレートに」商品の良さを表現したくて“Very good products.”“You must buy this.” “I love this. You too ?”などと話しました。しかし、彼らは試食さえしてくれず“Let us deal with my colleague”(社内にて検討します)などと言って退席。何がいけないのか、日本食に興味がないのか……と、かなり落ち込みました。

そんなとき、たまたまパブで在英5年になる日本人商社マンに出会い、自分の英語が取引先にうまく通じていないようだと話したのです。すると彼は「イギリス人はあまりストレートに正面から来られると、ためらいますよ。アメリカでは違うかもしれませんが、ここではやや回りくどい表現が相手を尊重していると思われ、そこからビジネス機会も広がっていきます」と、こんな言い方を教えてくれました。

“I have an opportunity that might be suitable for you.”
「あなたの会社にとってよいのではないかと思うお知らせがあります」

そこで初めて「ストレートで伝わりやすい」と思っていたものが、押しつけがましい英語表現で、相手を困らせていたと気づきました。早速、次の現地会社とのミーティングの最初に、 “I have an opportunity that might be suitable for you.”を使ってみたところ、今までと異なり、先方の目の色が輝いた気がします。「安くて健康的でおいしい。フランスでもまだ庶民のものになっていない」という配布資料内の文句にしっかり目を通し、またプレゼンに身を乗り出してじっくり話を聞こうという姿勢が見られ、翌日の試食会にも積極的に参加してくれました。まだ契約を取り付けるところまでは行っていませんが、初めてのミーティングでのひとつのフレーズが、イギリス人たちに「なかなかできるじゃないか」と思われたような気がします。フランスというライバル国の状況を伝えたこともイギリス人のプライドをくすぐったようです。この経験から、その国の文化や言葉の在り方を大切にしないといけないのだな、と学びました。

私のとっておきビジネス英会話!

日本語で婉曲な表現が使われるように、実はイギリス人も婉曲な表現を好むとは知りませんでした。英語は外国人とのコミュニケーション手段ですが、ただの言語ではなく相手を尊重したり、自分を認めてもらったりするための武器であることに気が付きました。

M・Tさんの体験談はこれからも続きます。どうぞお楽しみに!